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「あの案件、今どこまで進んでいたっけ?」担当者が不在のとき、チームの誰かが必ずこの問いに直面します。広告代理店の現場では、複数クライアントの案件が同時並行で走り、承認フローが担当者個人の頭の中にある状態が当たり前になっています。それでもなんとか回ってきたのは、担当者が無理をして全部把握していたからです。
- 担当者が休んだ途端に進捗が止まる、または誰にも状況が分からなくなる
- 「承認もらえた?」という確認メールが毎回飛び交い、それ自体が業務負荷になっている
- クライアントへの報告が遅れてしまい、「急かされてから動く」サイクルになっている
本記事では、広告代理店でよく起きる案件管理の崩れパターン3つを整理した上で、今日から実行できる具体的な立て直し方法を解説します。ツール選定の考え方から実際の運用手順まで、順を追って説明しますので参考にしてみてください。
案件管理が崩れる場面1:担当者が不在で進捗が誰にも分からない
広告代理店の案件管理でもっとも多いトラブルが、「担当者がいないと何も分からない」という状態です。案件の最新状況、クライアントとの合意事項、次のアクション。これらがすべて担当者の記憶かメールの受信箱に眠っています。
よくある具体的な場面を思い浮かべてください。月曜の朝、担当Aさんが急な発熱で休みました。クライアントのB社から「先週の修正案、確認できましたか?」という電話が入ります。チームの誰もが「Aさんに聞かないと分からない」状態。結局、Aさんに電話して状況を聞き出すか、「確認してから折り返します」と伝えて4時間後にようやく返答できた。広告代理店では、こういったシナリオが月に何件も起きています。
問題の根本は、情報が「個人の手元」に集まっていることです。担当者は一番よく分かっているので、自分の頭の中で管理するのが効率的に感じられます。しかし組織としては、その状態がもっともリスクの高い構造です。
別の例として、制作会社との確認もあります。「クライアントからバナーの修正指示が来たが、どのバージョンが現時点での確定版か分からない」というケースです。メールとチャットとドライブのフォルダにそれぞれ別のファイルが散らばっており、制作担当者が「どれを修正すればいいですか?」と聞いても、担当者しか答えられない。このような属人化した状態が続くと、担当者が不在のたびに業務が止まります。

情報を個人の手元から「チームが見える場所」に移すことで、担当者不在のリスクを大幅に減らせます。 具体的には、案件ごとに「ステータス」「直近の動き」「次のアクションと期日」の3点を、全員が参照できる場所に書き込む習慣をつくるだけです。
使うツールはスプレッドシートで十分です。Googleスプレッドシートを1枚用意して、列を「案件名・担当者・ステータス・次アクション・期日・備考」の6列に設定します。これを社内の共有フォルダに置き、毎日夕方に各担当者が自分の案件行を更新する運用にすると、翌朝には全員が最新状況を確認できます。
ステータスの選択肢は「提案中・制作中・確認待ち・修正中・完了」の5段階にするとシンプルで使いやすいです。複雑な分類にしすぎると更新が面倒になり、結局使われなくなります。
具体的な運用を想像してみてください。毎日17:00に「本日の更新タイム」を5分間設けます。担当者は自分の案件行を開いて、ステータスと次アクションを更新するだけ。これだけで、翌朝9:00に誰かがシートを開いたとき、すべての案件の最新状況が一覧できます。担当者が急に休んでも、シートを見れば「B社のバナー案件は確認待ち、期日は明日」と分かります。
案件管理スプレッドシートの最初の設計は「シンプルすぎるくらい」でちょうどいいです。後から列を追加するのは簡単ですが、最初に複雑にしすぎると定着しません。まず6列で始めて、1ヶ月運用してから足りないものを追加する方法をおすすめします。
案件管理が崩れる場面2:承認フローが属人化している
「田中さんに確認してもらってから、部長に回す」という承認の流れが担当者の頭の中だけにある場合、田中さんが不在のときに案件がストップします。広告代理店では、クリエイティブの確認・コピーの承認・見積もりの決裁など、複数段階の承認が必要な業務が多く、承認フローの属人化がボトルネックになりやすいです。
典型的なシナリオを見てみましょう。クライアントC社向けのキャンペーン案件で、バナー10点のデザインが上がりました。担当Sさんは「CDの加藤さんにまずレビューしてもらって、OKなら部長に最終確認してもらってからクライアントに送る」という流れを頭の中で管理しています。しかし加藤さんは週3日勤務、部長は不定期で外出。「加藤さんが確認してくれたかどうか」をSさんに聞かないと誰も分かりません。
「あれ、加藤さんに送りましたっけ?」「送ったけど確認してもらえたかどうか…」このやり取りに毎回30分〜1時間が費やされます。さらに承認が終わったのかどうかの記録が残らないため、後から「誰が最終確認したのか」を問われたときに答えられません。
この問題の解決策は「承認ルートをドキュメントに書き出すこと」です。
具体的には、案件の種類ごとに「誰が1次確認して、誰が最終承認するか」をシンプルな表にします。「バナー制作なら担当者→CD→部長」「見積もりなら担当者→営業部長」のように整理するだけで、担当者が不在でも別の人が同じルートで処理できます。
承認フロー表のサンプルを示すと、次のような形です。
| 案件種別 | 1次確認 | 2次確認 | 最終承認 | クライアント送付 |
|---|---|---|---|---|
| バナー・静止画制作 | 担当者 | CD(クリエイティブディレクター) | 営業部長 | 担当者 |
| LP・Webサイト | 担当者 | Webディレクター | 部長 | 担当者 |
| 見積書・提案書 | 担当者 | 営業部長 | — | 担当者 |
| 動画・映像制作 | 担当者 | ディレクター | 部長 | 担当者 |
この表を1枚作って共有フォルダに置くだけで、「誰に何を確認すればいいか」が担当者に依存しなくなります。
さらに一歩進めるなら、kintoneやAsanaのようなワークフロー管理ツールを使うと、承認の依頼と完了がシステム上で記録されます。「いつ・誰が・何を承認したか」の履歴が自動で残るため、後で「あれ、承認もらったっけ?」という確認のやり取りがなくなります。
承認フローをツールで管理し始めると、「承認が遅い人」が可視化されます。これは改善のチャンスですが、最初から個人の遅さを責める使い方をすると反発が起きます。まずは「見える化」だけを目的にして、改善は後から話し合いで進めるのが定着しやすいです。

kintoneは月額費用がかかりますが、スモールスタートであればAsanaの無料プランや、GoogleのTasksと組み合わせたスプレッドシート管理でも代替できます。重要なのはツールの選択よりも「承認ルートが書かれた場所が一つある」という状態をつくることです。
「承認済みかどうか」の確認に費やしている時間を計算してみると、1人あたり1日15〜30分、月に換算すると5〜10時間になります。10人のチームなら月50〜100時間が「承認確認」に使われている計算です。この時間を別の業務に振り向けるだけで、生産性は大きく変わります。
案件管理が崩れる場面3:クライアントへの報告が後手に回る
案件の進捗をクライアントに報告するタイミングが「催促された後」になっている場合、クライアントとの信頼関係に影響します。広告代理店にとって報告の速さは品質の一部ですが、社内業務に追われて後回しになるパターンが続くと、クライアントの満足度は確実に下がります。
具体的な場面を見てみましょう。毎月末、D社向けのディスプレイ広告の月次レポートをまとめる作業があります。Google Analyticsのデータを確認して、広告配信プラットフォームの数字を手元に転記して、PowerPointのテンプレートに貼り付けて、コメントを書いて送る。この作業に毎月3時間かかっています。しかも月末の忙しいタイミングに重なるため、後回しにしているうちにD社の担当者から「レポートはいつ頃いただけますか?」という問い合わせが来て、急いでまとめる、というサイクルが続いています。
この問題の多くは「報告のタイミングを決めていない」こと、そして「報告資料の作成が手作業すぎること」に起因します。
解決策は3つあります。
① 定期報告の曜日・フォーマットを固定する
「毎週金曜17時に進捗レポートを送る」と決めてしまえば、忘れることも後手に回ることもなくなります。レポートのフォーマットも固定し、「今週の完了事項・来週の予定・課題と対応策」の3セクションで構成すると、毎週テンプレートを埋めるだけで完成します。クライアントにとっても「毎週金曜に来る」と分かっているレポートは信頼の証になります。
② スプレッドシートからレポートを半自動で作る仕組みをつくる
案件管理スプレッドシートが整備されていれば、その内容を転記してレポートをつくる作業はGASで自動化できます。スプレッドシートのデータをGmailで定期送信する仕組みは、プログラミングの知識がなくても、GASのテンプレートをコピーして修正するだけで動かせます。
③ レポートの「型」をクライアントと合意しておく
「毎月このフォーマットで送ります」と最初に伝えて、クライアントに了承してもらうだけで、毎月一から「何を書けばいいか」を考える時間がなくなります。型が決まっていれば、数字を差し替えるだけで完成します。
クライアントへの定期報告を仕組みにすることで、「またお願いします」という依頼の電話がなくなり、担当者のストレスも大幅に下がります。
①案件の最新状況を全員が見られる共有スプレッドシートを1枚用意する ②案件の種類ごとに承認ルートを表で書き出す ③クライアントへの定期報告の曜日とフォーマットを固定する ④GASで報告レポートの半自動送信を設定する
3つの問題の根本原因:なぜ崩れるのか
ここまで3つの場面を見てきましたが、共通する根本原因が2つあります。
一つ目は「情報の在処が決まっていない」ことです。案件の状況はメール、チャット、担当者の手帳、PCのメモ帳などに分散しています。「情報はここに書く」という場所が決まっていないため、必要なときに探す手間が発生します。
二つ目は「情報を書く習慣がない」ことです。忙しい現場では、「あとで書こう」が積み重なります。案件管理ツールを導入しても、書き込まれていなければ意味がありません。「書くこと」が業務の一部として定着するまでには、仕組みと習慣の両方が必要です。
この2つを解決するのが、「書く場所を一つに決める」と「書くタイミングをルール化する」というシンプルなアプローチです。
ツール別の選択肢:どのツールを選ぶか
案件管理の崩れを防ぐためのツールを用途別に整理します。
| 用途 | 無料で始められるツール | 有料で本格化するツール | 向いている規模 |
|---|---|---|---|
| 進捗の見える化 | Googleスプレッドシート | kintone・Asana・Notion | 全規模 |
| 承認フロー管理 | GoogleフォームとGAS | kintone・Monday.com | 10名以上 |
| 定期報告の自動化 | GAS(Gmailと連携) | HubSpot・Salesforce | 20名以上 |
| ファイル・資料の一元管理 | Googleドライブ | Box・SharePoint | 全規模 |
| プロジェクト横断管理 | Asana(無料版) | Asana Premium・Wrike | 5名以上 |
30名以下の中小の広告代理店であれば、まずGoogleスプレッドシート+GASの組み合わせだけで、上記3つの問題のほとんどに対応できます。コストをかけずに始めて、運用が軌道に乗ったタイミングで専用ツールへの移行を検討するのが現実的です。
kintoneを導入した広告代理店の事例では、導入前は1件の承認に平均2.3日かかっていたものが、ワークフロー機能の設定後に0.8日に短縮されたケースがあります。ツールそのものより「承認を依頼する手順が明確になった」ことが効果の主因でした。
「どのツールから始めるか」を迷っている場合は、次の判断フローで決めるとシンプルです。
① まず「担当者不在問題」が最優先か? → Googleスプレッドシートで案件一覧表を作る
② 「承認のやり取りロス」が最優先か? → 承認フロー表+Asana無料版を試す
③ 「報告の後手」が最優先か? → GASでレポート半自動化から入る
④ 3つ全部同時に解決したい(10名以上)→ kintoneを検討する
よくある疑問:Q&A
Q1. スプレッドシートを作っても誰も更新しないのでは?
更新する動機が必要です。「更新しないと、翌朝の朝礼で確認される」「シートに書いていない案件の状況は聞かれても分かりません、というルールにする」など、更新することが「自分の仕事を守る」につながる状態をつくると定着します。まず管理職自身が毎日更新して、手本を見せることも重要です。
Q2. kintoneとAsanaはどう違うのか?
kintoneは「自分たちのルールに合わせて自由に設計できる」カスタマイズ型で、広告代理店の複雑な業務フローをそのまま再現できます。Asanaはタスク・プロジェクト管理に特化した直感的なツールで、「案件の進捗を追う」用途では十分機能します。コストはAsana無料版→kintone有料版の順に検討するのが現実的です。
Q3. Notionで案件管理するのはどうか?
Notionは情報の蓄積とリンクに優れており、「案件に関連するすべてのメモ・議事録・参考資料をひとつにまとめる」用途に向いています。承認フローの管理やタスクの自動通知は弱いため、Notionを「情報の蓄積場所」、Asanaを「タスク・進捗の管理場所」として使い分ける方法が実務ではよく使われます。
Q4. 導入の説得に上司が反対する場合は?
「ツールを変える」という提案よりも、「今月、担当者不在で発生したトラブルのコスト(残業代・対応時間)を計算してみる」というアプローチが効果的です。感覚ではなく数字で現状のコストを示した上で、「1ヶ月で回収できる改善案」として提案すると承認が取りやすくなります。
実際の立て直し:どこから手をつけるか
「全部一気に変える」はうまくいきません。まず1つの問題だけに集中して、小さく変えることが定着への近道です。
立て直しの順番としては、「進捗の見える化」から始めることをおすすめします。共有スプレッドシートを1枚つくって、チームで2週間試してみてください。これが機能し始めると、承認フローや報告の改善も自然につながっていきます。

現場からの反発を最小化するために、最初は「追加の作業を増やすツール」ではなく「今やっている作業をラクにするツール」として紹介することが大切です。「進捗確認のLINEが減ります」「催促の電話が来なくなります」という現場のメリットを伝えると、受け入れられやすいです。
① ツールを押し付けず、「今の困りごとを聞く」から始める
「あなたの仕事を変えます」ではなく「今、どんな場面で一番困っていますか」という問いかけから入ることで、現場が「自分たちの問題を解決してくれる」と感じるようになります。困りごとが「担当者不在の問題」であれば、共有スプレッドシートの必要性を現場自身が理解します。
② 週1回の更新習慣を先に作る
ツールを入れる前に「毎週月曜の朝、担当案件の状況を5分でメモに書く」という習慣をチームで始めてみてください。習慣が先で、ツールはその習慣を楽にするための補助です。
③ 完璧を目指さない
最初から全件を完璧に管理しようとせず、「動いている案件の上位10件だけ」から始める方が挫折しません。管理対象を絞ることで「更新コスト」が下がり、習慣として定着しやすくなります。
④ 1ヶ月後に振り返りをする
「導入してどう変わったか」を1ヶ月後にチームで振り返ることで、問題点を洗い出して改善できます。「この列は使っていない」「ステータスの選択肢を増やしたい」という声が出てきたら、そのタイミングで調整します。
案件管理の改善は「ツール導入」ではなく「情報の在処を決めること」が本質です。高機能なツールを入れても、書かれなければ機能しません。まず「書く習慣」と「書く場所」を決めることが先です。
失敗しやすいパターン:気をつけるべきこと
広告代理店の案件管理改善で失敗するケースには、共通したパターンがあります。
「ツールを入れただけで、運用ルールを決めなかった」パターンが最多です。 新しいツールを導入しても、「何をいつ書くか」「書かれていない場合はどうするか」が決まっていなければ、導入後2週間で誰も使わなくなります。
パターン1:全員一斉に切り替えた
一気に全員で切り替えると、「慣れ不足」と「ルール不明確」が重なって現場が混乱します。まず2〜3名の先行チームで試して、問題を洗い出してから全体展開するのが安全です。
パターン2:入力項目が多すぎた
「せっかくなら全部管理したい」という気持ちで入力項目を増やすと、更新が面倒になって形骸化します。最初は「ステータス・次アクション・期日」の3項目だけ。足りなければ追加するのが正解です。
パターン3:管理職だけが熱心で現場が無関心
管理のための管理にならないよう、「このシートのおかげで○○が解決した」という成功体験を現場が感じることが定着への鍵です。導入後の小さな改善成果を共有することで、現場のモチベーションが上がります。
まとめ:崩れた案件管理は、仕組みで立て直せる
広告代理店の案件管理が崩れるのは、担当者の能力の問題ではありません。情報が個人に集まる構造と、属人化した承認フローと、報告タイミングの曖昧さが重なった結果です。どれも、少しの仕組みの変更で改善できます。
今日できることは一つだけ、「チームで共有するスプレッドシートを1枚つくること」です。完璧でなくてもかまいません。今動いている案件を10件書き込んで、明日の朝みんなで確認してみてください。そこから改善は始まります。
「ちょっと聞いてみたい」だけでもOK! ツールや業務効率化についての相談をすべて1対1で丁寧にお答えします。 まずはお気軽にメッセージをどうぞ!LINE公式アカウントはこちら!
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大げさなコンサルティングではなく、明日から試せる具体的な一歩をお伝えするのが私たちのスタイルです。
「まず何から手をつければいい?」という入口の迷いを、今日ここから踏み出しませんか。
次の一歩として、まずは「今チームで一番困っている案件管理の場面」を一つ教えてください。その現状を、具体的に改善するプランをお伝えします。


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